効率的にオーディオ・レコーディングルームの吸音効果を高める方法

 今回はオーディオ室内の吸音性能(音の反響をコントロール)できる素材選びをご紹介させていただきます。高性能のオーディオであればあるほど音の拡散や再現能力が高いですが、部屋の大きさやスピーカー周囲に置いてあるモノの影響で余計な反響音(フラッターエコー)やブーミー(低音の響き)が発生してしまうケースがあります。オーディオ販売店で聞いたときはこんな音ではなかっとのに・・・、ということはありませんか?

 オーディオスピーカーそのものは同じ品質性能でも、天井までの高さや広さによって音の響きが変わったり、周囲にテーブルや椅子があるだけで拡散効果が出てしまいます。また、絨毯やカーペットは吸音効果を持ちますが、高音域の吸音に効果があるため(主に2,000Hz~)、中音域以下(500Hz~)が残ってしまい本来の再現能力に影響が出てしまいます。吸音材と言われている製品は、どんなものでも使用すれば「どの周波数帯も」吸音するわけではなく、各材料の得意な吸音音域がありますので、採用・設置前に性能確認をすることをおススメ致します。実際に設置してみないとわからないケースも多いですが、吸音性能がいいか悪いかは「残響室法吸音率」と「垂直入射吸音率」で判断が可能です。どちらも吸音性能を表しますが、測り方が異なっております。「残響室法吸音率」は吸音材を反響する部屋の中(主にコンクリート)に吸音材を12㎡ほど使用し、吸音材があるとき・ない時の差で吸音率を測定しております。「垂直入射吸音率」は29㎜と99㎜の円形の吸音材を測定管の中に入れ、測定管内で音を出し吸音の割合を測定します。そのため、部屋全体の音響コントロールを考えているのなら「残響室法吸音率」、小面積(例えばA4サイズ程度の吸音材を壁に取り付ける)であるならば「垂直入射吸音率」を参考にするといいと思います。測定データーを掲載している製品もあれば、無い場合もありますので、不安な場合は販売先もしくは製造先に聞いていただければ出していただけると思います。弊社の経験上ですが、吸音測定はJIS規格という国内規格で測定はしてますが、測定する部屋の大きさや測定機などは各測定機関によって異なります。例えば「垂直入射」を無響室で測定する機関もあれば、半無響室や静かな事務所で測定する機関もあります。当当然のことながら、測定場所によって結果も若干異なるので、初めて吸音材を取り付ける方は吸音性能の10%前後はあまり細かくこだわる必要はないかと思います。SHIZUKA Stillness Panelは「垂直入射吸音率」と「残響室法吸音率」どちらも測定しておりますので、用途に応じてご利用ください。

垂直入射測定時の写真です。黒い測定管の中に吸音材を入れ、吸音率を測定します
残響室法吸音率の試験方法です。約12㎡を設置し、吸音材があるとき・ない時の
試験を行います。
SHIZUKA Stillness Panelの残響室法データー。横軸がHz(周波数)、縦軸が吸音率(小数点×100で%になります)になります。縦軸の数字が大きいほど吸音性能が高く、横軸の数字が大きくなるほど高音域になります。グラフとしては500Hz以上はほぼ
90%以上の吸音をすることが読み取れます。

 さて、その吸音性能データーも表記の仕方に注意してください。例えば薄い素材(1~10mm等の厚さ)にも関わらず、低音域(100Hz以下)~高音域まで吸音しているデーターも見かけます。本当に厚さ10mmですべての音域を吸音してくれたら使用しやすい素材なのですが、本当は見方があります。実は「背面空気層」をとっているケースが多いです。空気層は50mm~100mmで測定しているケースが多いため、厚さ10㎜の吸音材を使用したとしても、その背面には50~100mmの空気層(つまり空間)を設けないと効果が出ないということになります。50~100mmの空間をあけるくらいであれば、ロックウールのような繊維材吸音率でも低音域を吸音できます。コンサートホールなどの設計では、室内容積の残響時間(音の響き)を確認し、上記の吸音率から必要な素材・設置面積を算出します。そのため、吸音率データーが読めると、コストや設置面積の低減にお役立ち頂けると思います。

 現在の研究では、すでに既存の素材でも組み合わせることで計算以上の性能を出すことも可能です。そのため、購入した吸音材の上に何か吸音材を取り付けると幅広い音域を吸収してくれる可能性があります。オーソドックスな組み合わせとしては、表面(室内側)が1~10㎜のフェルトのような繊維材、内部に吸音材(グラスウール、ロックウールなど。10~50mm)、背面に壁に固定用の板材(なくても可、厚さ1~5㎜)であれば500Hz以上の吸音を行うことが可能になってきます。

 中高音域の吸音に関しては厚さの変更で効果を出すことができますが、低音域(低周波)吸音に関しては有効な製品はあまり出ておりません。低音域も吸音材の厚さを厚くすることで吸音性能を向上できますが、ウレタンをいくら厚くしても低音域に関してはほとんど吸音しないことが分かっております。低音域の吸音では、吸音材表面に振動を受ける素材を取り付けることで、低音を受け止め緩和し、内部の吸音層で吸収してしまう方法が有効と言われております。実はこの補法は産業用機械(工場)の騒音対策として利用されている方法になります。ただし、振動を受け止める素材、さらに内部にて吸収する素材の組み合わせは無限にあるため、まだまだ研究と開発を進めていく必要があります(一応、工事などの低音を吸収・遮断するパネルは存在しますが、厚さが200㎜以上、重さも50kg/㎡と、室内に使うには適さない製品が多いです)。

 オーディオルームにおいては、弊社のSHIZUKA Stillness Panel SDMを背面に置いていただく方法を推奨しておりますが、SDMは広範囲の吸音(500~4000Hz以上)のため、オーディオの再現能力を正確に聞きたい方にはおススメです。オーディオの音の旨味を味わいたい方には、オーディオの背面ではなく、部屋の角や窓付近、自分の背面に置くことをおススメ致します。不要な反響音を取り除き、オーディオ本来の旨味を聞いていただくことができます。折り畳みができる製品の為、後付けでの設置も可能です。すでにオーディオルームをお持ちのお客様でも再現する音に合わせてご利用いただけます。都内のオーディオショップ様(オーディオユニオン御茶ノ水店 アクセサリー館様)で体験もできますので、性能にご不安な方はぜひご視聴くださいませ。

SDM設置例。オーディオ背面にブラック2枚を設置
SDM設置例。ブルーを設置。窓による反響を低減

 レコーディングルームでは、スピーカー、モニター周囲、自分の背面に置いていただくと、正確な音の聞き分けにお役立ち頂けます。また、大規模なスタジオにおいては、SDMを組み合わせていただくと簡易的な録音ブースもできます。マイク回りなどに設置していただくと不要なフラッターエコーを取り除き収録ができます。また、持ち運びが可能な為、スタジオ以外でも録音が必要な場合に役立ちます。SDMは現在、全国の販売店様にて販売をしておりますが、無料の貸し出しも行っておりますので、貸し出し希望の場合は「お問い合わせ」よりご相談くださいませ。また、静科では、吸音製品の開発もこれからも進めておりますので、こんな製品がほしい、こんな音域を取り除きたい、などのようなご意見も「お問い合わせ」にてお待ちしております。

SDMを組み合わせ簡易ブース(ブラックとグレー)を設置。マイクの音を収録
SDMを専用の袋に入れることで持ち運びが可能

 


神奈川県厚木市金田492-1